600万口座突破の三井住友FG「Olive」の現在地。PayPayやマネフォ連携など「共存戦略」の意味
600万口座突破の三井住友FG「Olive」の現在地。PayPayやマネフォ連携など「共存戦略」の意味
https://www.businessinsider.jp/article/2507-smbc-olive-strategy/
石井 徹[モバイル・ITライター](編集:小林優多郎)
三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)は7月15日、個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」が、サービス開始(2023年3月)から約2年半で600万アカウントを突破したと発表した。
同日に開催されたSMBCグループの戦略説明会では、新たに「マネーアシスト」と呼ばれるOlive契約者向けのスマホ完結型の少額融資サービスも発表。
マネーアシストの詳細とともに、矢継ぎ早に進めてきたマネーフォワードやPayPayなどといった他社との提携戦略についての現状を振り返った。
SMBCグループはOliveについて「銀行口座」「クレジットカード」「デビットカード」「証券」「保険」といった金融サービスを1つのアプリで管理できる「モバイル総合金融サービス」だとしている。
特徴的な機能の1つとして、1枚のカードで「クレジット(後払い)」「デビット(口座即払い)」「ポイント払い(前払い)」「キャッシュカード」の4つの機能を切り替えて使える「フレキシブルペイ」が挙げられる。
Oliveの基本的な戦略は「囲い込み」から「共存」へと舵を切りつつある。サービス開始から2年を経て、ユーザーが複数の金融機関を使い分けている実態が明らかになったためだ。
その象徴的な取り組みが、2024年7月に発表されたマネーフォワードとの提携と、2025年5月に発表されたPayPayとの相互連携だ。
マネーフォワードとの提携では、他行口座の残高表示や、自分の口座間でお金の出し入れをOlive上で実行する構想が示されている。
将来的には証券やローンなど、さまざまな金融機関の口座をOlive上で簡単に操作できることを目指している。
一方、Oliveが抱えていた別の課題が、PayPay加盟店での利用だった。
国内にはカードが使える店、さまざまな決済が使える店、特に「PayPayだけが使える店」も存在する。
フレキシブルペイは基本Visaブランドが付与されているため、世界1億店以上のVisa加盟店で利用できるが、Visa加盟店以外、特に日本で急激に成長するPayPay専用の加盟店では直接的には使えない。
Oliveを含む三井住友銀行の口座からPayPay残高にチャージしたり、三井住友カード発行のクレジットカードをPayPayに登録することで、間接的に支払うことはできた。
だが、前者はチャージまで数ステップかかり、後者はPayPayの基本方針としては自社子会社発行の「PayPayカード」に集約する方針を示していた。
偶然にも、SMBCグループが会見を開いた15日には、PayPayが「登録ユーザー7000万人を突破」を公表。PayPayによると「日本の人口の2人に1人以上、日本のスマホユーザーの約3人に2人」はPayPayに登録していることになる。
PayPayの成長は、SMBCグループとしてもその存在は無視できない規模になってきていたと推察できる。
この課題を解決するため、SMBCグループはPayPayとの連携を発表した。
OliveアプリでPayPay残高を表示、出金可能なPayPay残高を手数料無料で三井住友銀行の口座に出金できるようになる。また、三井住友カード発行のクレジットカードも従来通りPayPayアプリに登録して利用し続けることができることも確定している。
こうした各種手数料無料やPayPayとの密な連携は、PayPayカードやPayPay銀行などのPayPayグループ内の特権だったが、Oliveは金融サービスとして初めてPayPay外のサービスとしてこうした「優遇」を受けることになる。
ちなみに、前述したフレキシブルペイの支払いモードにも「PayPay残高払い」が追加される予定。
実現すれば、Oliveのカードを1枚持つ(もしくはモバイルウォレットに入れておく)だけで、PayPay残高をVisa加盟店で使えるようになる。
Oliveは金融サービスだが、非金融分野への展開も他社と協業する形で進めている。
2025年3月にはカナダの旅行代理店・Hopper社と旅行予約サービス「V TRIP」、7月にはふるさとチョイスを運営するトラストバンクらと提携した「Vふるさと納税」を相次いで開始している。
これらのサービス選定の基準は「金融との相性」だ。ふるさと納税は言わずもがなだが、旅行も昔からクレジットカードとの相性が良い。
今後は、健康分野にもサービスを拡大していく予定。ソフトバンクと提供する「ヘルスケアポータル」では、24時間365日利用可能な健康相談チャットや、最短5分で利用可能なオンライン診療を用意する見込みだ。
Oliveの現在地を整理すると、3つの軸が見えてくる。
1つ目は、モバイル総合金融サービスとしての機能拡充だ。
マネーフォワードやPayPayなど、グループ外のサービスとも積極的に連携し、顧客の利便性を最優先に考えている。「Oliveがあれば、他社サービスも使いながら、便利に金融サービスが使える」という世界を目指している。
2つ目は、幅広い顧客層への対応だ。
若年層向けの一般カードから富裕層向けのInfiniteまで、幅広いラインナップを用意。マネーアシストのような少額融資から、フレキシブルコンサルティングのような富裕層向けサービスまで、多様なニーズに応えている。
最後の3つ目は、金融起点の非金融サービスの展開だ。
金融サービスをより便利に使うための周辺サービスを展開することで、単なるサービスの追加ではなく、金融サービスとのシナジーを重視している。
600万アカウントを突破し、次のフェーズに入ったOlive。2025年度中には、AIを活用した「AI-Olive」への進化も計画されている。


